12時5分前。店の前にはすでに7、8人が並んでいる。
席の数はカウンターに5人、テーブル2つに8人。今日はツイている。
12時きっかりに店のカーテンが開き、お客はカウンターから順に埋まっていく。
すでに厨房では下ごしらえを終え、お鍋でお湯がおどっている。
客はみな、厨房から「何にしますか?」の声がかかるのを待ちながら品書きを見ている。
カウンターの客から順に「4番と餃子」「6番」「8番」と注文が入る。
「何にしますか」ついに僕の番が来た。すでに僕の今日の「美味しいもの」は決まっている。
「7バン!」パイコーメン。
鎌倉赤坂飯店には3つの不文律がある。
その1 客は聞かれるまで注文しない。
その2 14番目以降の客は外で待つ。
その3 子どもは連れてこない。
一見の客のなかには、愛想のない店だ、頼んでも返事もしないという人がいる。
でも違うんだな。試しに閉店近くの2時過ぎにいけばわかる。
決して愛想が悪いわけではない。忙しい時間帯に手抜きをしたくないからだ。