通天閣からタクシーワンメーターで飛田新地に着く。遊郭街の入り口には石の大きな門がまだ残っている。北田英治と冷やかして歩く。各店の看板は白い四角に黒文字で統一されている。店構えや屋根の形(切妻が二つ重なった形)も同じものが多いようだ。どの店にもヤリテババアと厚化粧の女が入り口に座り、その横に招き猫が飾られている。座っている女もどこか招き猫のようだ。
遊郭の奥に百番という料理屋があった。予約がいるということで、中を見ることができなかった。今から90年前、初代の通天閣は上がエッフェル塔、下がパリの凱旋門だったという。では百番は東洋の竜宮城か。大阪には大正時代がまだしたたかに生きていた。