朝9時半、家人が朝早くから始めていたパン焼きがやっと終わった。
今日焼いたパンは、よもぎパン、ライ麦パン、ドライフルーツのパンの三種類。
家人がパンを焼き始めてから何年が経つだろうか。結婚間もない頃、長女が生まれる前からだから13年近くになる。最初はオーブンがなく、ドーナツ形のパン焼き鍋で焼いていた。今よりもずっと重く、堅いパンだった。
今のオーブンは2代目。業務用のオーブンがないので、蒸気が出ない。
石焼きイモを焼くときのように、小さな石をオーブンに敷き詰めて霧吹きを使って蒸気を加えている。パンの表面の焼き加減、表面はカリッと、中身はしっとり焼くことに苦労している。「新しいオーブンが欲しいなあ」が家人の口癖。
最近は友人の店
Beach muffinにもパンを置いてもらっている。家人のパンを待っているファンも少しはいる。
●パン焼きの材料について
パンを焼くのに必要な材料は、小麦粉と塩と水と酵母です。
小麦粉についてですが、やはり100パーセント国産の小麦粉を使いたい。
その理由は三つあるのですが、その一つの理由はちょっと大げさですが、昔の人は「三里四方のものを食すれば病せず」と言いました。人は自分が住んでいる土地と自分の体を切り離して考えることはできないということです。だからなるべく近くで採れたものを感謝して頂くことが基本だと思います。ただ今の時代、葉山で小麦が採れる訳もないのでずいぶん妥協してせめて国産の小麦をと。
もう一つの理由は、輸入の小麦は特別なルートのものでない限りみんなポストハーベストをしているのでそういうものは使いたくないということです。ポストハーベストとは輸入をする時に、虫やカビがつかないよう薬をまいて燻蒸するのです。ポストハーベストをしてない国産の小麦を置いておくとちょっと暖かくなるとすぐ穀象虫がわく。
我家でも穀象虫が広がらないように小麦を密閉しておくのにけっこう苦労しています。そのくらいのものですから船でアメリカやカナダから運んでくるためには薬をまいて燻蒸でもしないと虫だらけになったり日本にいない害虫を上陸させないためにも必要なんでしょう。でも虫を殺す薬がかかった小麦を食べたくない。
もう一つの理由は、日本の小麦の生産料は年間50万トン〜60万トンくらいで自給率はたったの10パーセントくらいです。やはり食料の時給率が低いことはいざという時すごく恐いことだと思います。自給率の高い健全な国にしたい、そのためにはやはり需 要を伸ばすことではないでしょうか。
ただ国産小麦の性質はパン焼きには向いていません。アメリカやカナダの小麦は硬質小麦といい粒が硬くタンパク質をたくさん含んでいます。一方国産小麦は軟質小麦といい、粒が柔らかくタンパク質が少ない。小麦粉はタンパク質の多い順に強力粉、中力粉、薄力粉と分類されます。小麦粉を水でこねると、そのタンパク質が水を吸ってふくらみ独特の粘りと弾力をもったグルテンという組織をつくり、それが発酵したときに海綿状に膨らんでパンになるのです。だからタンパク質の多い強力粉がパン焼きには一番向いているのです。国産の小麦粉はタンパク質の多い方でも中力粉程度でなので、輸入の強力粉で作ったふかふかのパンと比べると、どうしてもどっしりしてしっとりしたパンになります。
ヨーロッパでもアメリカやカナダの小麦よりタンパク質が少なく、どっしりハードなタイプのパンが昔から親しまれてきましたが、日本では最近やっと少しずつ広まり始めたところでしょうか。
●保存法と美味しい食べ方
保存方法は2、3日保存する時は、ビニール袋で密閉して水分が逃げるのを防ぎます。そして食べる前に軽く暖める程度に、トーストします。長期間保存する時は、スライスしてから冷凍庫に入れ、食べる10分くらい前に出して自然解凍し軽く暖める程度にトーストします。天然酵母のパンは、日にちが経つと硬くなりますが、暖めるととてもいい香りがして美味しく食べれるのが不思議です。それはイーストのパンよりすごいところかもしれません。