エドワード・O・ウィルソンの『生命の多様性』が、岩波現代文庫になった。
ものすごく面白い。
1883年8月、スマトラとジャワの間の小島クラカタウ島の火山が大爆発を起こす。
TNT火薬150メガトン級の規模で、轟音はシンガポールまで届いたという。
島は破壊され、周りのジャングルの島とは対称的に、この世の終わりのような不毛の島になった。
これまで名もない島であったクラカタウ島は俄然世界中の生物学者に注目される。
なぜなら熱帯の生態系の誕生からの変遷のようすを現実に見ることができるのだから。
島はもとの生態系の戻るのか、それとも別の生態系が現れるのか、最初の生物は何か……。
のっけからこんな調子でどんどん引き込まれていく。
「適応放散」という共通の祖先をもつ種が異なるニッチに広がっていく章では、
キツツキのいないハワイ島で、ハワイミツスイがキツツキのニッチに進化していく例が紹介されている(下図)。
感心、感心、また感心。
文庫本ではあるが、きれいなイラストも添えられている。
上下2冊で2400円。「高いよー」という人は本など読まなくていい。
●岩波現代文庫
『生命の多様性』エドワード・O・ウィルソン著 大貫昌子・牧野俊一訳
上・下巻 各1200円