●バードギールを求めて
今回の調査でもっとも私たちが期待していた地域がヤズドである。調査地域のなかでもっとも東南に位置し、乾燥度も高い。バードギール(採風口)が屋上に並ぶ町並みを調査に行く前に資料で知り、ぜひバードギールの民家の微気候を実際に測定してみたいと考えていたからである。ヤズドにはいってみると、バードギールの残る地域は確かにある。しかし調査対象になる民家が見つからない。どの家もきわめて閉鎖的である。益子教授とガイドのメヘディさんが朝から晩まで手を尽くすが、目当ての民家はいつも不在である。
私と写真家の北田英治、OMソーラー協会の河、青嶋の4人は近くの廃墟から屋上伝いにバードギールのある民家の屋上に辿り、中庭を見下ろすが、住んでいる気配がない。後にわかったことであるが、この地域の古い民家は既に保存地区となっており、その多くは行政が管理している。また個人の所有であっても別荘のように使用している場合が多い。
少なくともヤズド市内ではバードギールの生きた民家を調査するのは、既に遅すぎたようだ。
写真17 YAZDの旧市街。バードギール、明かり取りが屋上に並ぶ。
写真18 バードギール